WHO 増築

スイス, ジュネーヴ, 2014

今日の建築コンペにおいては、ユニークな建築的シンボルがほぼ強制的に求められるが、ジュネーブの世界保健機関本部の増築案を募る同コンペはこの流れに反するもので、Jean Tschumiによって設計され、1973年に完成した既存の本館への意図的な従属という確固たる控えめさを求めるものだった。

アネックスをめぐる残酷な問題は、従属という基本的性質にある。アネックスという存在は、それまで本体にとって必要なかった部分であり、規模も美的水準も本体に劣り、個体としての価値がないものだ。
—レム・コールハース

自立した第二のビルであるエクステンションは、現状を補足・強化する役割を担う。コルビジェの「オフィス・ユニテ/office-unité」 のように、アルプスの超大自然の中にどでんと移植された背高ブロックのようなモダニスト建築もあった。しかし、ここでは「力づくの移植」という概念の先を行く「剥奪なき付加」を目指す。既存の庭園に敷き詰めた厚い浸透性カーペットのような建物が、直角に折り曲げられた折り紙のような格好で新旧アンサンブルを包み込む。モダニストの「強権姿勢」が文字通り「服従」に転ずる。高さを得た庭。それがカーペットの上でさらに伸長し、既存のビルから南側の林までをリンクさせる。
新エクステンションは自画自賛の名声などとは縁遠い。構造・構成は単純。厳格なオフィス機能をしっかりと守りつつ、単調なオフィス風景を周囲の自然というかけがえのない資産により色付ける。日常の繰り返し作業と隔離性の高い内向的な仕事環境に潤いを与える。結果、あたかも事務的単調さとモダニズムユートピアが示す潜在的な美しさの対比関係へ敬意を払うかのように、現実主義と興奮との間を行き来するデザインとなっている。

(翻訳:山尾暢子)

 

スイス, ジュネーヴ, 2014

Type

オフィス

Status

コンペティション

Team

フロリアン ブッシュ, 宮崎佐知子, A. ヴァクセレール, 山脇ももよ, 宮本哲, 髙橋卓

構造: ARUP

設備: ARUP

環境: ARUP

施主: World Health Organisation

Size

延床面積: 47,500 m²

Structure

鉄筋コンクリート造, 鉄骨造
WHO 増築
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