厳島港宮島口旅客ターミナル

広島県廿日市市, 2016

広島湾の北西部に位置する厳島は、通称宮島として親しまれ、古くから自然崇拝の対象であった。広島湾岸に並ぶ小さな町々の喧騒を後にして桟橋からフェリーに乗れば、ほんの10分でこの壮麗な島に辿り着く。海の真ん中にぽっかりと浮かぶ大鳥居と強い潮流が盾となり、俗世の空気は届かないといった風情でこの島は佇んでいる。

宮島への道は海路のみ。宮島へ向かう人々のほとんどが、宮島口ターミナルからフェリーに乗る。このターミナルでは、何十年もいじくりまわされたおかげで、乗船に関するありとあらゆる物が寄せ集まり、妙に折衷的な風景が出来上がった。二つのフェリー会社がそれぞれ勝手に作り上げた別々の世界をのりで貼り合わせたような場所で、乗客はありとあらゆる雑多な情報に耳目を引かれつつ、やっと目的の桟橋に辿りつくことになる。

この分裂した世界を統合する新ターミナル建設にあたり、デザイン公募コンペが開かれた。しかし、白紙のキャンバスが与えられた訳ではなく、公募要項には「不都合な既成事実」が含まれていた。まるでその部分は設計の対象に値しないとでも言わんばかりに、桟橋部分がすでに発注済みだったからだ。結果、設計は陸部に限定された。

これに対し、我々は通例に反する提案をしてみた:厳島・宮島口ターミナル(IMT)には、今ある商業色を助長するのとは全く逆の潜在力があると考えたからだ。宮島の清廉な精神性を本州側に引き込むことで、商業主義を浄化することもできるのではないか。人々はこの新ターミナルで世俗の重荷から解き放たれ、さらに純粋な経験を受け入れるために心の準備をするのだ。

IMTは旅の始点であり終点である。我々は建物ではなく、徐々に姿を変える天蓋に覆われた通り道を提案した。駅を始点とした道は、実際、背の高い木々から始まる。島側ターミナルをほぼ鏡に映したかのように、この森は、人々がふと歩を緩め、深い想いに耽るための場を提供する。

人々は森を歩きながら知らぬ間に柱が木々の幹に取って代わったことに気づく。見上げると、木の葉の天蓋と水平線にきらめく波をつなぐように波打つ屋根。視線の先には、桟橋に辿り着くまでずっと、厳島の壮麗な姿がある。

(翻訳:山尾暢子)

 

広島県廿日市市, 2016

Type

公共, インフラ, 交通施設

Status

コンペティション

Team

フロリアン ブッシュ, 宮崎佐知子, 髙橋卓, 山野友嵩, オリバー パーシャヴ, 劉志超 (研修生)

コラボレーション: aaat (高塚章夫)

構造: OAK (新谷眞人, 川田知典)

環境: Kankyo Engineering (和田隆文)

Size

延床面積: 3,420 m²

屋根下半屋外: 3,590 m²

鎮守の森: 18,000 m²

Structure

鉄骨造, 木造
厳島港宮島口旅客ターミナル
厳島港宮島口旅客ターミナル
厳島港宮島口旅客ターミナル
厳島港宮島口旅客ターミナル
厳島港宮島口旅客ターミナル
厳島港宮島口旅客ターミナル
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厳島港宮島口旅客ターミナル

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