多賀町中央公民館

滋賀県多賀町, 2015

日本の地方都市は深刻な高齢化の波に晒されている。過疎化が進み、町はどんどん活気を失っていく。増え続ける空き家を抱える町や村は、「アポカリプス」的な映画の不気味な舞台さながら、底知れぬ虚空が主人公に取って代わる。時に風変わりな数々のふるさと再生の試みの中、じわじわと過疎が進むこうした町の多くにコミュニティーセンターが芽生え始めている。
滋賀県の東にある小さな町で開かれたこのコンペ用のプロジェクトは、建物としてのコミュニティー・センターという概念を問い直すものとなった。

方程式から発見へ

四方を壁に囲まれた入れ物という既成概念(半日だけの内向的幸福という典型的なコミュニティー・センターのあり方)を脱却し、変化を厭わない住処に柔軟に対応できる多義的な「森」を提案。従来の方程式に従うのではなく、コミュニティーを発見する姿勢を打ち出した。AかBかという二者択一ではなく、ビルの内外で行われる活動に対応し、常に変化し続ける建築を提案した。

「自由な平面」前と後

田舎風の日本建築を見れば至る所にヒントが隠されている。開かれた重構造と、その結果生まれた柔軟性は、数世紀に渡り日本建築における空間の多義性の鍵を握ってきた。垂直(壁)に対して平面(フロア)を優先する考え方は、「自由な平面 」が近代主義により「発見」されるずっと以前から日本建築における空間の特徴であった。土地特有の類型を採用し、大きな屋根が重構造空間の曖昧さに輪郭をつける。可動式パーティションの枠を超え、サイズの異なる無数の柱が、よりダイナミックであると同時にソフトな深さと透明性を喚起する。

快活な空間

あえて構造に冗長性を持たせることで、プログラム上の柔軟性が生まれる:境界線の自由な組み換えが可能となり、四角四面の部屋から解き放たれたコミュニティーは、流動的なゾーンで構成された自由な空間で活き活きと生まれ変わる。

(翻訳:山尾暢子)

 

滋賀県多賀町, 2015

Type

公共, 文化施設

Status

コンペティション

Team

フロリアン ブッシュ, 宮崎佐知子, 髙橋卓, 宮本哲, A. ヴァクセレール, レネー レダー

構造: OAK (新谷眞人, 川田知典)

Size

延床面積: 3,000 m²

Inner Garden: 400 m²

Structure

木造
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