K8

近畿地方京都市, 2014—2015

京都で最も複雑な路地空間を擁する花街、先斗町は、バーや芸妓屋・娼妓屋、宿屋、住宅、店舗などが賑やかに軒を連ね、何百年にも渡り京都のナイトライフにとって欠かせない都会の雰囲気を創造する場所だった。この先斗町に隣接する木屋町通りにある50平米のその土地には、数年前まで2階建の家が三軒も林立し、ここに12軒ものバーが雑居していたのだと聞かされた。

先斗町の東側は京都の主河川である鴨川に面しており、都市規制により何世紀にも渡り変化を阻まれてきた場所だ。今でもここには低層の家屋が立ち並ぶ。
対し西側の木屋町通りは先斗町の目抜き通りに平行して走る。時代とともに規制緩和が進んだこちら側では、6階建までの色とりどりのビルがひしめいている。この地域が開拓自由なフロンティアと宣言されてから、贔屓目でも平凡としか描写しようのない独自性に乏しい建物がクイックマネーを狙ってこぞって建設された。その時代を象徴するような二棟の背の高いビルにはさまれた狭小敷地がK8の計画地だった。
先斗町が連続的出会いを平面上で行う場所だとすれば、K8はそのような出会いを垂直方向へ転換したものだ。前述の雑居ビルでは、ユビキタスなエレベーター(相互関連のないばらばらの階を通過する個別の管といった風情のエレベーター)によって、各階は「接続」されると同時に「分離」されていた。K8は、全8フロアを通して切れ目なく変化する一貫した空間だ。一階では食前酒、最上階では先斗町から鴨川に広がる夜景を眺めながら食後酒、という具合に夜のふけるに従い展開する連続空間。ここでは、階段が分離機能ではなく中心的舞台になる。K8の中心コンセプトの典型である階段は、ディテールを出来る限り「無」に近づけることで、切間のない空間的透明性が生まれ、限られた空間を最大限に体感出来る。
ファサードは均質さを保ちながらも変わり続ける表情を持たせることで、京都の伝統建築に通じるある種の曖昧さを表現した。
数百本の木製ルーバーを徐々に角度を変えて配置することで、建物自体が周りの環境に常に呼応するかのような「動き」の感覚が呼び覚まされる。外からは、建物の中が見えるようで見えない。
前に立つ者は、この建物が何階建なのか、奥行きはどのくらいあるのかと首をかしげる。
端に寄るにつれ、ルーバーの角度を平面に近づけ、表面に陰影のある一枚板と錯覚するような角度で設置。
真ん中に向かっては、中がちらりちらりと見える程度に透明性にばらつきを持たせた。
建物の前を歩きながら眺めると、ファサードが動き始め、通り過ぎる人々の周りを建物自体が移動するかのような錯覚に陥いる。人々はちらりと垣間見られる建物の内部へと誘い込まれる。

(翻訳:山尾暢子)

 

近畿地方京都市, 2014—2015

Type

商業, 飲食店, 美術館・博物館

Status

竣工

Team

フロリアン ブッシュ, 宮崎佐知子, 髙橋卓, 宮本哲, A. ヴァクセレール, レネー レダー, オリバー パーシャヴ, K. コールフォード (研修生), 提島しおり (研修生), アン マレン ルエデ (研修生), 中村佳世 (研修生)

構造: OAK (新谷眞人, 川田知典)

施工: 株式会社麦島建設

Size

延床面積:

Structure

鉄骨造
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受賞

レクチャー

展示・展覧会

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