ハンガリー音楽博物館

ハンガリー, ブダペスト, 2014

ハンガリーの音楽文化は非常に多面的な背景を持っている。「自発」と「計画」、「即興」と「演出」、「口伝」と「記録(楽譜)」の間を行き来し、オーバラップし、交換し、影響を与えあうことでユニークな音楽遺産が形成されている。

ハウス・オブ・ハンガリアン・ミュージックの設計にあたり、FBAでは、シンプルな表示行為をもとに複雑な空間/音響上の経験を生み出す仕掛けを提案した。音響設備としても展示設備としても「理想的最適形態」と言える5つのシンプルな箱を、回転させながら上へ上へと積み上げていく。繊細な蜘蛛の巣状の糸がその周りに皮膜を張り巡らせ、無数の隙間が形成される。

このデザインは、外皮膜と単純な箱のコア部分との間に生まれる「非形式」領域と、完璧に音響制御された箱の内部という二つの世界から成り立っている。
個々が独立しつつも積み重なった箱の上下は開閉自由で、上下空間の音を取り込んだり伝えたりするサウンドトンネルの役割も果たす。

内外を自由に行き来するサウンドが建物と外界環境をリンクさせる。このフォーマルな音のトンネルは文化的クロスセクションでもあり、訪れるものは再編可能な多面的ハンガリー音楽の歴史劇へと誘われる。

「形式」の周りに織りなす「非形式」という図式により、「リズムとサウンド」という音響上の二大前提要素に、予想外の発見を繰り返す空間が差し出せれる。
ハンガリーの音楽文化自体がそうであるように、ハウス・オブ・ハンガリアンミュージックは、「非形式」と「形式」が共存しつつお互いを深め合う場所となっている。(音楽が)精密であればあるほど、自発性の低い入れ物が求められるというのも、おそらく偶然ではないだろう。

(翻訳:山尾暢子)

 

ハンガリー, ブダペスト, 2014

Type

美術館・博物館, 劇場

Status

コンペティション

Team

フロリアン ブッシュ, 宮崎佐知子, 山脇ももよ, 宮本哲, 髙橋卓, A. ヴァクセレール

Size

延床面積: 10,505 m²

Structure

鉄骨造
ハンガリー音楽博物館
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