有島のI邸
北海道ニセコ町有島, 2020—2023
パンデミックの只中において、他のプロジェクトのように「止まる」のではなく、「始まった」本計画が、失われつつあった集中の状態を、空間として再び定着させる試みである。世界各国が国境を閉ざし、移動が制限されるなか、施主は国内移動を余儀なくされた。北海道にあるFBAの既存プロジェクトに滞在したことをきっかけに、施主は我々の建築と出会う。
「雑然とした現代において、この家は、フィルターの役割を果たす:雑多な景色をシャットアウトし、その奥に寝そべるのどかな風景ー羊蹄山へと続く手付かずの大自然ーに焦点が絞られる。」
2017年に我々が別のプロジェクトで記したこの一節は、後に施主自身の体験として具体化されることになる。施主は、キッチンカウンターの周囲で過ごす時間が次第に増えていったことを語る。料理をし、食事をするという行為が、切り取られた外部の風景と重なり、意識が自然とそこへ向かっていく。反復される滞在は、周囲の環境に対する認識を更新した。訪れるたびに、この場所に固有の拠点を持つという考えが、現実味を帯びていく。
ニュアンス
敷地はそこから数キロ離れた、ニセコ町外縁部の、まだ十分に開発されていないエリアに位置する。環境は近似しているが、条件はより複雑である。明確な眺望の対比ではなく、閉じたものと開かれたもの、近景と遠景が重なり合う構成を持つ。東側には羊蹄山があり、視線の明確な焦点となる。足元には、かつて灌漑用水路であった小川が流れ、その対岸には、こちらよりわずかに高い地形が連続する。羊蹄山は正面に位置するにもかかわらず、対岸の落葉樹林によって、季節ごとに姿を隠し、また現す。北にはアンヌプリ岳、南には昆布岳があり、いずれも控えめな存在として、同様の関係性の中にある。
集中
敷地の複雑さは、異なる高さからの視点によって最もよく理解される。一方で、最終的な解答を導いたのは、視線と行為を一点に集約する必要性であった。世界が未踏の状況へと踏み込み、供給網は滞り、建設コストは高騰する。パンデミックは、人々に立ち止まり、何が本質であるかを見極める時間をもたらした。
外部がどのように内部の空間的な流れを満たすべきかについて、施主と建築家は時間をかけて検討を重ねた。その結果、必要とされたのは、料理し、食事をするための大きな一つの場所であるという結論に至る。周囲の環境に直接結びついた、単一の場である。
我々は、その場をすべての上に重ねる構成を提案した。
ここで言う「すべて」とは、分節可能な機能である。収納、洗濯、睡眠といった要素は地上階に配置される。浴室と寝室は、足元の水音や木々の気配といった、直近の環境を直接的に取り込む。
ギャラリー
階段を上る行為は、内部から外部へと移行する身体的な体験に近い。
階段コアと、腰高で止まる調理と食事のための島以外に視線を遮る要素はなく、上階はひとつの大きな空間として立ち現れる。
壁と屋根を覆う白い石灰プラスターは、周囲の環境が刻々と変化させる色彩を受け止める媒介として機能する。光は側方から均質に流入する。異なる大きさを持つ五つの正方形の開口は、壁面に掛けられた絵画のように配置され、眺望のためのプラットフォームを、外部そのものを展示するギャラリーへと変換している。
北海道ニセコ町有島, 2020—2023
Type
Status
Team
フロリアン ブッシュ, 宮崎佐知子, 重村茉代, 島玲旺, ヨアキム ナイス, C. バウムガーテン, 大澤祐太朗
構造: 川田知典構造設計 (川田知典)
施工: 脇坂工務店
Size
延床面積: 98 m²
テラス部分: 26 m²
Structure
publications
関連プロジェクト:
- T 邸, 2021—2025
- 中富良野のW邸, 2022—2024
- 虚空のある家, 2022—2024
- 三番町の家, 2023—2024
- 昇, 2021—2023
- 有島のI邸, 2020—2023
- 伊豆高原のI邸, 2019—2021
- ヒラフ・クリークサイド, 2021
- 森の中の家, 2017—2020
- 神楽坂のYプロジェクト, 2017—2018
- ニセコのK邸, 2015—2017
- 千葉のS邸, 2011—2015
- バーチカル・ランドスケープ, 2015
- 私たちのプライベートスカイ, 2013
- ヒラフのL邸, 2010—2013
- BL プロジェクト, 2012
- 吉佐美のA邸, 2009—2012
- 内にひらく家, 2011—2012
- 高田馬場の家, 2010—2011
- F&Fプロジェクト, 2011
- 斜面の家, 2011
- 土気 7, 2010
- 雪の中の二軒, 2009—2010
- 軽井沢の家, 2009
- RG プロジェクト, 2009
