千葉のS邸

千葉県季美の森, 2011—2015

囚われて

東京郊外の町の片隅に、映画「トゥルーマン・ショー」を彷彿させる一戸建てが立ち並ぶ一角がある。平凡な家々の合間を縫って小道を進んで行くと、思いがけなく緑の出口にたどり着いた。用意された脚本通りの「幸福」が続くかと思った矢先、我々はその緑の出口に向かって走り続けていた。

エスケープ

この開口部を強調するかのように、同用地は2メートル余りの高低差によって上下二段に分かれている。エスケープのチャンスだ：

せっかく見つけた抜け穴を埋めてトゥルーマン・ショーの囚われの身に甘んじるのは勿体無い。我々は高低差を利用してその先に見える景色を生かそうと考えた。
高い方の土地に建物が突き出てる。
家と地面の間に隙間ができる。背後に見える緑に誘われて近づくと左手に地中に埋まってる入り口以外、ストリートレベルに建物はない。
エントランスの扉は階段吹抜部分で、白い壁と幾つかの窓に囲まれており、隣接する中庭に向けて空まで見通せる窓もある。家の真ん中に配置された階段はまるで白いギャラリーであり、様々な枠組みの中で家全体の軸の役割を果たす生命線となる。ダイニングとリビングは、南側に広がる緑へと開かれている。

(翻訳：山尾暢子)